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2004.07.01

もっと強く

もっと強く願っていいのだ
わたしたちは明石の鯛が食べたいと
もっと強く願っていいのだ
わたしたちは幾種類ものジャムが
いつも食卓にあるようにと
もっと強く願っていいのだ
わたしたちは朝日の射すあかるい台所が
ほしいと
すりきれた靴はあっさりとすて
キュッと鳴る新しい靴の感触を
もっとしばし味わいたいと
秋 旅に出た人があれば
ウィンクで送ってやればいいのだ
なぜだろう
萎縮することが生活なのだと
おもいこんでしまった村と町
家々のひさしは上目づかいのまぶた
おーい 小さな腕時計やさん
猫背をのばし あなたは叫んでいいのだ
今年もついに土曜の鰻とあわなかったと
おーい 小さな釣り道具屋さん
あなたは叫んでいいのだ
俺はまだ伊勢の海もみていないと
女がほしければ奪うのもいいのだ
男がほしければ奪うのもいいのだ
ああ わたしたちが
もっともっと貪婪にならないかぎり
なにごとも始まりはしないのだ        「もっと強く」茨木のり子
茨木のり子詩集を引っ張り出してきて、今晩読みまくる理由は謎。
釣具屋さんが伊勢の海をわかったつもりになるひつようもなく
みてみたいなら「見たい!」と叫べばよい
欲求がなければ無理に叫ぶこともない
自分がほしいものはなんなのか
今 どう感じているのか なにを思っているのか
そんな感情を大事にしながら 私は生きていきたい
自分の 感性を 思いを 自分自身が守れる瞬間に
自分自身が賞賛すればいい!
そして それができる人
                        私は大好き。