ふらっとスペース金剛 代表 岡本聡子 メディアアーカイブ

2017.09.27

祖母がくれた魔法の言葉 ~こどもが親にしてくれる~

出典:ふぁみなび ぷろなび
http://fami-navi.jp/column/detail/139


◆心配せんで大丈夫!子どもが親にしてくれるから

はじめから親である人はいない。こどもの世話をし、ごはんをたべさせ、大きくしていくうちに少しずつ親らしくなってくる。だから心配せんで大丈夫、子どもが親にしてくれるから。

出産したものの、どうやって育てていけばいいのか分からず途方にくれて、親になるというプレッシャーに押しつぶされそうになっていた時、祖母が自分の「子養い」を懐かしむように私に話してくれた言葉だ。祖母は子育てとは言わず「子養い」と言っていた。戦時中の子育ては、空腹な子どもにごはんを食べさせる事が、親の役割として比重が高かったのだろう。日々、子ども達に食べさせることばっかり考えていただけで、はらはらする事やはちゃめちゃな事もいっぱいしたけど、気づけば子ども達は私を「お母さん」とよび、親にしてくれていた。と、少々恥ずかしい告白をしたように話していた表情が印象的だった。

私の場合、事前に仕入れた子育てに関する予習はまったく役にたたなかった。情報量も多く、頭でっかちで挑むのだが、現実目の前にいるのは本物の人間なのだ。眠ることを邪魔しているわけではない、むしろお願いしたいのはこちらの方なのに寝ない。なぜだ?抱っこもした、お腹もいっぱいなはず、おむつも綺麗、快適な気温、なのに泣きわめく。事前学習は、まるで歯が立たなかった。
体当り出たとこ勝負の子育てだったが、この言葉のおかげで、子育てのピンチを切り抜け、娘たちの思春期にともなう嵐のような日々をやり過ごすことができた。

 

◆子どもは授かりもので、預かりもの

子どもは天から授かりものでもあるけど、預かりものでもある。だからこそ、大事にしないとあかん。

この言葉からは、こどもは親の所有物ではないという戒めとともに、一方で、親だけが子どもに対する全責任を負っているわけではない、という安心感を得ることができた。
新生児の娘を抱いたとき、私は愛おしさとともに強烈な不安を感じた。この小さくはかなげな命を私は生かし続けることができるのか?!金魚の世話もままならず、植物をことごとく枯らしてしまう私には無理だ!と本気で恐ろしかった事を思い出す。

親の願いとはうらはらに、子どもが死んでしまうことも多かった祖母の時代。天からの授かりもので、今預かって養っている、くらいの気持ちで子どもとの距離感を保つことが、親にとっても子にとっても精神的に重要だったのだろう、と想像する。

子育て環境や子育て家庭の状況は、1940年代からは変化している。しかし、親だけが丸抱えの子育ては精神的にも物理的にもしんどい、このことは変わらない。現在の子育てにおいても、授かって、預かっていると思えたら、少し肩の力が抜けるのではないかと思う。